不動産取引に関わる身近な法律!不動産売買の基礎知識

不動産の取引に関わる法律は様々あります。

 

今回は、

不動産取引を行う者に対し規制を定めるものや、不動産を購入する消費者を保護するものなど、

私たちに身近な法律をまとめてみました。

 

宅地建物取引業法

不動産業者(宅地建物取引業者)は、都道府県知事または、国土交通大臣(2つ以上の都道府県に事務所を設置)の免許を受けなければなりません。

「宅地建物取引業法」は、免許を受けて不動産取引を行う者に対し、

安全かつ円滑に不動産取引を行うための、さまざまな規制を定めています。

不動産の取引をする際には、不動産業者が「宅地建物取引業法」の規定をきちんと守っているか十分に注意しましょう。

 

宅地建物取引業者票の掲示

不動産業者は、事務所や業務を行う場所ごとに、よく見える場所に「宅地建物取引業者票」を掲示することが決められています。

免許の有効期間は5年で、そのつど更新の手続をとらなくてはなりません。

※平成8年3月31日までは3年ごと

免許有効期間も明示されていますので、更新手続がきちんとなされているかも確認しておきましょう。

また、免許証番号の前についているカッコ内の数字は更新の回数を表しており、更新を1回行うと(2)になります。

この数が大きいとそれだけ長く業務を行っているということになり、信頼度を計るうえでひとつの判断材料になるでしょう。

 

<例> 大阪府知事 (3) 第〇〇〇号

 

 

重要事項の説明

不動産業者は、契約の成立までの間に、取引の対象となる不動産に関する重要事項を説明しなければなりません。

重要事項の説明は、「重要事項説明書」を書面で作成・交付したうえで、

宅地建物取引士が「宅地建物取引士証」を提示して行うことが決められています。

 

<説明すべき重要事項>

1、登記されている内容に関する事項

2、法令に基づく制限の概要

3、私道負担に関する事項(建物の賃貸借以外の場合)

4、水道、電気、ガス等の供給、排水施設の整備状況

5、物件が未完成の場合は完了時における形状、構造等

6、マンション等の場合は敷地に関する権利の種類、内容等

※平成30年4月1日施行予定の宅建業法の改正により、既存建物についての建物状況調査の実施の有無、実施している場合の結果の概要、設計図書・点検記録等の保存の状況についても説明すべき事項として追加されます。

7、代金、借賃等以外に授受される金銭の額および目的

8、契約の解除に関する事項

9、損害賠償額の予定または違約金に関する事項

10、手付金等の保全措置の概要

11、支払金、預り金等の保証、保全措置の有無

12、代金等に関する金銭のあっせんの内容およびその貸借が成立しないときの措置

13、割賦販売の場合は、現金販売価格、割賦販売価格、引渡しまでに支払う金銭・支払時期等

14、宅地造成等規制法による造成宅地防災区域の指定の有無

15、瑕疵担保責任に関し措置を講ずるか否か。講ずる場合にはその措置の概要

16、その他、石綿使用の調査結果の記録の有無と記録がある場合にはその内容、耐震診断結果の記録の有無等

 

契約内容を記載した書面の交付

不動産業者は、契約当事者の住所・氏名、不動産の内容、売買代金とその支払時期、引渡時期、登記申請の時期など契約内容を記載した書面を作成し、契約の当事者に交付することが義務付けられています。

(通常、売買契約書の中身として記載、交付されます)

重要事項説明書や、契約内容を記載した書面には、

宅地建物取引業者名を明示し、宅地建物取引士が記名押印しなければなりません。

 

誇大広告等の禁止

宅地建物取引業者は、取引の関係者に対し誠実にその業務を行わなければなりません。

不動産業者が広告を行う場合、所在地、規模、形質、利用の制限、環境、料金などについて、

実際のものより著しく優良であったり有利であると誤認させるような、誇大・虚偽の表示をしてはいけません。

 

広告開始時期・契約締結時期の制限

造成前の土地や建築の完了前に販売する建物(青田売り)の場合は、「開発許可」や「建築確認」などを受けた後でなければ販売等の広告はできません。

広告には必ず「確認許可番号」や「建築確認番号」が表記されます。

また、許可がおりるまでは、売買契約の締結や、売買もしくは交換の仲介もしてはならないことになっています。

 

手付金等の保全

物件の引渡し前に買主が支払う手付金について、第三者に保管させる等の方法で保全することを「手付金等の保全」といいます。

不動産業者自らが売主となる場合、

工事完了前の宅地または建物の売買で、代金の5%を超える、または1,000万円を超える額の手付金を受け取るときには、手付金の保全を講じることが義務付けられています。
また、完成物件において、手付金の額が代金の10%を超える、または1,000万円を超える場合も同様です。

 

手付貸与の禁止

不動産業者が顧客に対し、手付金を立て替えたりして契約を誘引することや、

後日受け取るという約束をすることで契約を誘引するような行為は禁止されています。

 

クーリングオフ

不動産業者が売主となる宅地や建物の売買契約について、

当該業者の事務所以外の場所で購入の申込みや売買契約の締結をした買主は、

書面により、申込みの撤回や契約の解除をすることができます

この場合、不動産業者は、損害賠償や違約金の支払いを請求することはできません。

 

ただし、次の場合は申込みの撤回はできません。

・買主が当該業者の事務所等で購入の申込みをし、当該事務所等以外の場所で売買契約を締結した場合
・クーリングオフ制度について書面にて告げられた日から起算して8日を経過したとき
・買主自身が、自宅や勤務する場所で売買契約に関する説明を受ける旨を申し出た場合
・宅地や建物の引渡しを受け、かつ、代金をすべて支払ったとき

 

 

その他

不動産業者が売主となって売買契約を締結する際には、他にも次のような制限を受けます。

 

・損害賠償額

契約の解除に伴う損害賠償額の予定や違約金を定めるときは、その合計が売買代金の額の10分の2を超えてはならない。

・手付金の額
付金の額は、売買代金の10分の2を超えてはならない。

・瑕疵担保責任についての特約

瑕疵を担保する責任は、特約によって期間を定めることができるが、

物件引渡しの後最低2年間(または瑕疵の発見後1年間)は、不動産業者が負うことが義務付けられる。

・アフターサービス

新規物件の販売においては、一定のアフターサービスの義務を負うことが一般的。

・顧客の氏名・住所等の確認、取引記録の保存

不動産業者が宅地や建物の売買契約の締結またはその代理もしくは媒介を行う場合に、「犯罪収益移転防止法」に基づき顧客(個人・法人)の本人確認が義務付けられる。(賃貸借契約についてはその対象には含まれない)

個人については運転免許証等の提示によって、氏名・住居・生年月日を確認し、

法人については法人の登記事項証明書、印鑑証明書等の提示に加え、実際に取引を行っている担当者の本人確認が必要。

また、本人確認記録と取引に関する記録を作成し、どちらも7年間保存する。

・その他禁止事項
重要な事項について、故意に事実を告げない、不実のことを告げる行為等を禁止する。

この「重要な事項」については重要事項説明書の内容のほかに取引の関係者の信用に関する事項などが定められる。

 

消費者契約法

消費者契約法は、消費者の利益を保護するために定められた法律です。

申込み・承諾の取消し、差し止め請求

事業者の次の行為により消費者が誤認、または困惑した場合は、消費者は契約の申込みや承諾の意思表示を取り消すことができます

また、適格消費者団体は、不当勧誘行為差止請求をすることができます。

(※不特定かつ多数の消費者の利益を擁護するために差止請求権を行使するために必要な適格性を有する消費者団体として内閣総理大臣の認定を受けた法人を「適格消費者団体」といいます

・消費者が誤認した場合

不実の告知>
事業者が重要事項について事実と異なることを告げ、消費者がこれを事実と誤認した場合

断定的判断の提供>
物品、権利、役務などについて、将来の価額や受け取るべき金額など、将来における変動が不確実な事項について、事業者が断定的判断を提供して、消費者がその断定的判断の内容が確実であると誤認した場合

不利益事実の不告知>
重要事項またはその関連事項について、その消費者の利益となる旨を告げて、かつ、不利益となる事実を故意に告げなかったことにより、消費者がその不利益となる事実が存在しないと誤認した場合

・消費者が困惑した場合

消費者契約の締結について勧誘する際に、消費者の住居や会社等から退去するよう告げても事業者が退去しない場合や、消費者が事業者から勧誘を受けている場所から退去したい旨を告げても退去させない場合。

 

契約条項の無効

消費者契約法では、次のような条項は無効とされます。

また、適格消費者団体は不当契約条項の差止請求をすることができます。

・事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項

・事業者の債務不履行により生じた消費者の解除権を放棄させる条項

・事業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項

・消費者契約が有償契約である場合、目的物の隠れた瑕疵により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項

・消費者契約が有償契約である場合において、当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があること(当該消費者契約が請負契約である場合には、当該消費者契約の仕事の目的物に瑕疵があること)により生じた消費者の解除権を放棄させる条項

・消費者が消費者契約を解除したときに事業者に支払う損害賠償額の予定や違約金に関する条項で事業者の平均的賠償額を超える部分

・消費者の履行遅滞の場合の損害金、違約金を予定する条項で、年14.6%を超える部分

・信義誠実の原則に反して消費者の利益を一方的に害する条項

 

住宅の品質確保の促進に関する法律

住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)は、住宅生産者などの共通ルールのもとで、質の高い住宅を選びやすくし、住宅建築に伴うトラブルの未然の防止や速やかな紛争解決ができるようにと定められた法律です。

新築住宅の請負および売買契約に関する瑕疵担保制度

新築住宅において、建築請負人・売主は住宅の構造耐力上主要な部分等(基礎、壁、柱、床版、屋根版等)については、引渡しの時から10年間の瑕疵担保責任を負うことが義務付けられています。

住宅の性能評価・紛争処理体制

住宅の性能について比較できるようにその表示基準を設定し、

その性能を客観的に評価できる第三者機関を設置しています。

共通ルール

「構造耐力」「省エネルギー性」「遮音性」などの住宅の性能を表示するための共通ルールを定め、住宅の性能を比較しやすくしています。

第三者機関

住宅の性能を客観的に評価する第三者機関(登録住宅性能評価機関)を整備することで、住宅の性能に関する表示の信頼性が確保されています。

なお、住宅性能表示は、任意の制度であり、これを利用する場合は、所定の費用がかかります。

また、登録住宅性能評価機関は、「住宅性能評価書」を交付することができます。

住宅性能の保証

登録住宅性能評価機関により交付された「住宅性能評価書」を添付して契約がされた場合、評価書に表示された性能を有する住宅の建築工事を行うことや引き渡すことを契約したものとみなされます。

また、性能評価を受けた住宅に係るトラブルに対しては、裁判外の紛争処理(あっせん・調停・仲裁)の体制が整備されており、万一のトラブルの場合にも迅速かつ円滑な紛争処理が図られています。

 

反社会的勢力排除条項

現在全国の都道府県において、暴力団排除条例が制定されるなど、暴力団排除に向けた取組強化の機運が高まっています。

それを受け、不動産流通団体では、不動産取引の契約書(売買・媒介・賃貸住宅)のモデル条項として、暴力団等反社会的勢力排除条項を定めています。

 

契約当事者が反社会的勢力ではない旨の表明保証

契約当事者は、それぞれ相手方に対し、自らが暴力団等の反社会的勢力ではない旨の表明保証をするほか、脅迫的な言動や暴力行為等をしない旨の確約をします。

この表明保証に違反した場合、無催告で契約を解除することが可能となります。

 

反社会的勢力の事務所等に使用させない旨の確約

買主は、売主に対し、不動産を反社会的勢力の事務所や活動拠点として使用しないことを確約する必要があります。

この確約に違反して、目的物を反社会的勢力の事務所に使用、または使用させた場合、売主は契約を解除することができます。

 

まとめ

このように、様々な法律や条項があります。

これらは基本的に、私たち個人を守るためのものです。

このような法律や条項を知ることで、安全で安心な不動産取引ができることでしょう。